メディア総合研究所  

メディア総合研究所は次の3つの目的を掲げて活動していきます。

  1. マス・メディアをはじめとするコミュニケーション・メディアが人々の生活におよぼす社会的・文化的影響を研究し、その問題点と可能性を明らかにするとともに、メディアのあり方を考察し、提言する。
  2. メディアおよび文化の創造に携わる人々の労働を調査・研究し、それにふさわしい取材・創作・制作体制と職能的課題を考察し、提言する。
  3. シンポジウム等を開催し、研究内容の普及をはかるとともに、メディアおよび文化の研究と創造に携わる人々と視聴者・読者・市民との対話に努め、視聴者・メディア利用者組織の交流に協力する。
Media Research Institute
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メディア総合研究所
160-0008 新宿区四谷三栄町6-5 木原ビル2F
Tel: 03-3226-0621
Fax: 03-5361-8225
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声明・アピール

「秘密保全に関する法制の整備」に対する意見

2011年11月30日
メディア総合研究所

 政府が2012年の通常国会への提出をめざして法案化作業を進めている秘密保全法制に関し、メディア総合研究所は、「秘密保全の対象が防衛分野に限らず広範囲にわたること」「その特別秘密の指定が恣意的に行われる恐れがあること」「厳罰化によって公務員らによる情報開示が過度な萎縮を招き、憲法が保障する表現の自由や国民の知る権利を損なう恐れがあること」から強く反対し、政府は撤回をただちに表明するべきであると考える。
以下、主な理由を述べる。
 
1.そもそも立法事実の証明がない
 秘密保全法制は「政府における情報保全に関する検討委員会」の下に設けられた「有識者会議」が今年8月に出した報告書がそのたたき台になるという。国の安全(2)外交(3)公共の安全及び秩序の維持――の3分野のうち国の存立にかかわる重要情報を「特別秘密」に指定し、故意の漏洩には最高懲役10年を科すという。ところが、報告書は現行の国家公務員法の守秘義務違反(懲役1年以下)や自衛隊法の防衛秘密漏洩(懲役5年以下)、MDA(日米相互防衛援助協定)秘密保護法違反(懲役10年以下)の限界を具体的に指摘する記述は見あたらない。
報告書に添付された資料には2000年以降の主要な情報漏洩事案として8件が列記されている。このうち起訴されたのはわずか2件に過ぎず、その中で海上自衛隊におけるイージスシステム情報の漏洩事件の懲役2年6月(執行猶予4年)がもっとも厳しい確定判決である。これは現行法による実効性が十分働いている証拠なのではないか。
 
2.防衛秘密をめぐる危険な実態
 読売新聞が2005年に報じた中国海軍潜水艦の火災事故を巡り、同紙記者に情報を提供した防衛省情報本部所属の1等空佐が防衛秘密漏洩の疑いで書類送検された(08年)。当時、公海上で起きた国民の生命・安全にかかわる火災事故情報を防衛秘密としていた防衛省の判断に批判が起きた。今年3月の東日本大震災による東京電力・福島第一原子力発電所事故では、政府・東電による情報隠しのために多くの住民が放射線被曝を強いられた。
今回の秘密保全法制のきっかけとなった尖閣沖漁船衝突事件(2010年)における衝突映像は本来、公開してしかるべき情報だ。これを主要な情報漏洩事案として位置づけていること自体が、この法制の危険性を如実に示している。情報公開制度や公益通報者保護制度の一層の充実を図ることが先決だ。
 
3.乱用の責任を国民に押しつけるな
 有識者会議の報告書は「第6 国民の知る権利等との関係」の中で、「本法制は、その趣旨に従って運用されれば、国民の知る権利との関係で問題を生じたり、取材の自由を不当に制限したりするものではない」に続けて、「しかしながら、ひとたびその運用を誤れば、国民の重要な権利利益を侵害するおそれがないとはいえない」とし、「国民においてはその運用を注視していくことが求められる制度であることは、特に強調しておきたい」と記している。
今年9月、東京高裁は沖縄返還(72年)を巡る日米両政府が交わした密約の存在を認める判決を1審・東京地裁判決(10年)に続いて出した。高裁は密約関連文書を過去に廃棄した可能性にまで踏み込んで認定したが、これは極めてずさんな公文書管理の実態もしくは意図的とも言える秘密保護主義を指摘したものだった。しかし、日本政府はいまなおそれらを認めようとしていない。有識者会議の報告書は、このような政府に向けて非常に危険な制度導入を提案しながらその責任を国民に押しつけているもので、有識者委員の見識を疑わざるを得ない。民主主義社会においては、戦前の治安維持法の例を出すまでもなく、危険な制度はできるだけ持つべきではない。
 
以 上