メディア総合研究所  

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  3. シンポジウム等を開催し、研究内容の普及をはかるとともに、メディアおよび文化の研究と創造に携わる人々と視聴者・読者・市民との対話に努め、視聴者・メディア利用者組織の交流に協力する。
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声明・アピール

「通信・放送の総合的な法体系の在り方<平成20年諮問第14号>答申(案)」に関する意見について

2009年07月21日
メディア総合研究所

 〔総論〕
 答申(案)は「ブロードバンド・ゼロ地域の解消」と「テレビ放送の完全デジタル化」を根拠に2010年を節目としている。しかし、NTT経営計画、デジタル対応テレビの普及率等、様々なデータから、いずれも現実には無理な目標であり、2010年に通信・放送法制を大幅に改定する論拠は乏しい。しかも、答申(案)は2006年段階の「通信・放送の在り方に関する懇談会」およびその後の「通信・放送の在り方に関する政府合意」に固執し、"はじめに水平分離論(ハード・ソフト分離論)ありき"の論調をベースとし、最も重視されるべき市民レベルでの情報の発信・享受や言論・表現の自由といった点には全く触れず、総合的な検討がなされていない。
また、地上テレビ放送においては規制強化が懸念される事項が多く盛り込まれた一方、ラジオや地域放送への言及はなく、通信分野においても具体的な施策が見えない。法体系の見直しによるデメリットは明らかだが、メリットが全く見えない答申(案)である。
答申(案)で示された「大括り」という言葉は、法律レベルでの一本化を示すのか、概念としての統合化なのか、意味が不明である。「通信・放送の総合的な法体系」というからには、法体系の構造程度は示すべきで、この段階では検討することすらできない。「大括り」が法律レベルをさすのであれば、内容はともかく条文数が膨大なものになることが予想され、一般の市民にとって極めて難解な法律となる懸念が強い。法律案の骨子を提示したうえで、意見募集を行うべきである。
日本の通信・放送制度がNTT、NHKを基軸としているのは過去の法制史をみれば明らかであり、その2つの事業体に関わる詳細な検討を除外して答申されていることは、この法体系がすでに「総合的」でないことを自ら証明している。また、諸外国の事例をみても明らかなように、通信・放送制度改革は、所管する行政機構の抜本的見直しが不可欠である。先進国においては、独立行政委員会方式など、国による直接規制を避ける工夫がなされている。言論・表現活動の自由を保障するしくみについて言及がないことも「総合的」ではなく、あわせて検討すべきである。

〔個別の記述について〕
1.法体系見直しの必要性について
ブロードバンド・ゼロとテレビ放送の完全デジタル化の計画が困難な現状において、早急に法制度を整備すべき必然性はない。また、答申(案)にいう「世界最速・最安のデジタル・インフラ上で、世界最先端の通信・放送サービスを実現していくためには、法制についても、他の先進諸国に比べて合理的・先進的な内容を目指すことが適当である」にしては、内容が乏しく、その実現は不可能であり、また行政機構について言及がないのは不適当である。
 見直しに当たっての3つの視点は「水平分離」至上主義的な発想であり、その必然性や現行制度のデメリットについての記載がなく、根拠が不明である。5つの目的については、言論・表現機関としての放送を扱う際にもっとも重要な表現の自由の確保という視点や災害時のライフライン・地域文化の発展といった、現在の放送が担っている役割への言及が欠けている。また、項目のみが列挙され、それぞれについての説明がないため、論拠たりえていない。
4.コンテンツ規律
 答申(案)は「コンテンツ」の定義を欠いており、範囲が不明確である。本来、放送番組については憲法21条で保障する表現の自由の適用が極めて重要であるが、答申(案)には記載がない。また、無線による放送、有線テレビジョン放送、電気通信役務利用放送はそれぞれ発展経緯・規模などが異なり、ハード・ソフト分離を前提にコンテンツ規律を「集約・大括り化することが適当」とする論理的根拠が極めて薄弱である。
 現行の地上放送は、放送番組に対する政府の直接的な関与を回避するため、電波設備に対する施設免許制度となっている。現状では、このように表現の自由に対する配慮が制度的になされているにもかかわらず、総務省による放送番組に対する行政指導が行われていることは周知のとおりである。
 答申(案)は経営の選択肢の拡大という名の下に、地上放送への委託・受託放送制度の導入を提言している。しかし、これでは委託放送事業者の認定の際に番組内容が判断材料となるおそれがあり、政府が番組内容を判断して認定する事業免許制に近い運用がなされる懸念がある。また、既に個々の地上放送局は莫大な費用をかけて中継局設備の整備を進めており、衛星放送のように一事業者によって全国的なハード設備が整うことはありえず、地上放送における受託放送事業者が想定できない。このような現状で、経営の選択肢が拡大されるというのは欺瞞である。
さらに、答申(案)は地上放送と特別衛星放送を放送普及基本計画の対象としているが、現行の地上放送における放送普及基本計画は「ハード・ソフト一致」を前提にしており、委託・受託形式を地上放送にも導入した場合、基本計画の対象に委託放送事業者も入ることになり、制度的に矛盾する。
 また、答申(案)は番組規律として放送番組の種別や放送時間の公表を求めることを提言しているが、こうしたことは自主自律のもとで放送事業者自らが行うべきものであり、法規制によって強制されるべきではない。表現の自由享有基準については従来、行政の恣意的な運用・改定がなされてきたこともあり、放送の多元性・多様性・地域性確保の観点から、現行のような省令ではなく、法律の中に明記して位置づけるべきである。
6.紛争処理機能の拡大
 電気通信事業紛争処理委員会を拡大する答申(案)となっているが、現在の同委員会は総務大臣が任命する五名の委員で構成されており、各界の意見を反映できる仕組みとはなっていない。機能の拡大にあたっては、表現の自由を扱う組織であることを含め、構成・権限などの見直しが必要であり、官による権限強化とならないような検討が別途必要である。
8.その他の論点
 答申(案)はNTTを具体的な検討から除外し、NHKについても実質的な検討からはずしているが、日本の通信・放送制度を考える際に、この二つの事業体をどのように位置づけるかは大きな課題である。その検討がない状態で、「総合的な法体系」を呼称するのはまさに"羊頭狗肉"の答申であると言わざるを得ない。

以上