メディア総合研究所  

メディア総合研究所は次の3つの目的を掲げて活動していきます。

  1. マス・メディアをはじめとするコミュニケーション・メディアが人々の生活におよぼす社会的・文化的影響を研究し、その問題点と可能性を明らかにするとともに、メディアのあり方を考察し、提言する。
  2. メディアおよび文化の創造に携わる人々の労働を調査・研究し、それにふさわしい取材・創作・制作体制と職能的課題を考察し、提言する。
  3. シンポジウム等を開催し、研究内容の普及をはかるとともに、メディアおよび文化の研究と創造に携わる人々と視聴者・読者・市民との対話に努め、視聴者・メディア利用者組織の交流に協力する。
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声明・アピール

人権擁護法案の再提出に反対する声明

2005年03月8日
メディア総合研究所

日本ジャーナリスト会議
日本出版労働組合連合会
日本新聞労働組合連合
日本ペンクラブ言論表現委員会/人権委員会
日本民間放送労働組合連合会
メディア総合研究所



 与党は、2003年10月に審議未了・廃案となった「人権擁護法案」の再提出に合意したと報じられた。再提出にあたって、報道機関による人権侵害を救済の対象としたいわゆる「メディア規制」部分については、別の立法で解除するまで凍結することで対応することにし、今通常国会での成立を期しているという。
 2002年3月に国会上程されて以来、継続審議を繰り返しついに廃案となったこの「人権擁護法案」は、根本的な欠陥を抱えた法案といわざるを得ない。私たちは、人権救済のための法案作成は、根本から立案のやり直しでなければ到底受け入れられず、この法案の上程・審議に強く反対の意を表明する。
 人権の擁護を掲げる以上、最大の脅威である公権力による人権侵害が重視されなければならないはずなのに、法案が救済の対象としているのはわずかに差別と虐待だけにとどまり、公権力が市民の思想・表現の自由やプライバシーなどを侵害しても人権侵害とされず、救済の対象とされていない。公権力の人権侵害に正面から対処せず、逆に「お上」が人権の「擁護者」を名乗って民間の人権侵害を取り締ろうとする今回の提案は、「人権擁護」の名に値しない代物と言わざるをえない。
 人権の適切な救済を確保するためには、国連も求めているように、人権救済の機関が政府から独立していることが欠かせない。この法案がかつて廃案となった大きな理由は、人権侵害の実態が多数指摘されてきた拘置所・刑務所・入国管理施設などを所管する法務省の外局として「人権委員会」を設置するのでは、委員会の独立性はもとより、公正で実効的な救済も担保できないという、各方面からの厳しい批判にあった。この点について根底から出直す提案がなければ、この法案はおよそ審議に値しない。
 さらに私たちは、法案で「差別的言動」と「差別誘発・助長行為」を人権侵害とし、「差別表現」を広く規制していることに注目したい。これまで日本の法律では、具体的な「行為」を離れて、「言論・表現」についてこのような一般的な形で規制する条文はなく、規制対象とされるものが抽象的であることを含め、憲法21条に規定する「言論、出版その他一切の表現の自由」に違反する危険な条項になりかねない。
 とくに後者では「文書の頒布、掲示その他」が含まれ、差別的取扱いを誘発・助長する「おそれがあることが明らか」であるものには、「将来行わないこと」も含め勧告や差し止め訴訟も提起できることになっている。この条項をもとに、出版や放送の事前差し止めも認めるような規定も設けられている。


 そもそも言論・表現の自由は、基本的人権の中でも優先的な価値をもつものとされ、それを規制するためには、明白・緊急で取り返しがつかないような危険があるなど、極めて具体的、限定的である必要がある。「言論には言論で」が基本的な原則である。今回の法案はこうした原則を捨て去り、安易に表現の自由への規制を法制化しようとするものであり、このような差別表現が強制調査の対象とされている点も含め、断じて認められるべきではないと考える。
 また「メディア規制」部分の凍結も、事態の改善にはならない。メディアの取材や報道について「人権委員会」の強大な規制権限を法案に明記したまま、その条項を条件付きで凍結するということは、報道機関に対して「問題があればいつでも凍結を解除する」という威嚇効果をもち、政府や与党が報道機関を監視下に置き目を光らせることを意味し、メディアの萎縮を招く危険が高い。
 法案の取材規制部分は、ストーカー防止法と同様の表現で、取材者の具体的な取材の手段を規制する内容になっており、仮に凍結が解除されれば報道・表現の自由に対する重大な制約となる。人権機関がメディア規制にまで立ち入ることは国際的にも例を見ず、必要な規律はメディアの自主規制に委ねるべきだ。そもそも、廃案までの間にあれだけ批判があったにもかかわらず、「メディア規制」部分を削除せずに「凍結」という異例の形で法案に残したこと自体、政府・与党にとってこの法案における最大の狙いが、メディアの手足を縛ることにあったことを物語っていないだろうか。
 このように、期待される人権擁護の機能は十分果たせず、一方で市民の表現活動やメディアの取材・報道の自由を不当に抑圧するおそれの強いこの「人権擁護法案」は、一部凍結などで到底認めることはできない。私たちは、現在の日本で人権がどのように侵害されているのかを丁寧に調査・検証した上で、新たな人権救済機関が必要だとすれば、どういう救済制度が用意されるべきか、広く国民的な議論に委ねて根本から検討しなおすことを強く求める。