声明・アピール
旭川医大・北海道警の行き過ぎた法執行に抗議し、道新に経緯の再調査と記者を守る施策の提示を求める見解
2021年08月5日
メディア総合研究所
メディア総合研究所
旭川医大・北海道警の行き過ぎた法執行に抗議し、
道新に経緯の再調査と記者を守る施策の提示を求める見解
2021年8月5日
メディア総合研究所 所長 砂川 浩慶
国立大学法人・旭川医科大学への取材をめぐり、北海道新聞(以下、道新)記者が逮捕され、48時間拘束される事案が発生した。メディア総合研究所は、今回の事案は行き過ぎた法執行であり、大学・警察に抗議するとともに捜査を終結させることを求める。また、北海道新聞社に対しては第三者機関による調査を実施し、その経緯を明らかにするとともに、取材活動に従事する記者が安心して働ける環境整備を求める。
一連の経緯は以下のとおりである。
国立大学法人・旭川医科大学の吉田晃敏学長による不適切発言をめぐり、学長解任を審議することになった学長選考会議(非公開)を取材していた北海道新聞記者が6月22日に建造物侵入容疑で現行犯逮捕された。選考会議の開かれている看護学科棟4階廊下の会議室前で取材していたところ、会議室から出てきた大学職員が身柄を押さえ、北海道警旭川東署に引き渡したというものだ(常人逮捕)。各社の報道によれば、旭川医科大学は「記者は返答せず立ち去ろうとした。学外者が無許可で建物内に侵入していると判断、その場で取り押さえ警察に通報した」(毎日新聞7月3日朝刊)と説明している。
吉田学長の不適切発言は、『週刊文春』2020年12月24日号が「コロナを完全になくすためには(クラスターが発生した)あの病院が完全になくなるしかない、ということ」などといった内容を報道したことで発覚した。ところが旭川医科大学の広報対応は、酷いものであった。具体的には▽地元記者クラブなどは同大に対し、以前から報道責任者による直接の対応を求めていた。だが、大学側は応じず、総務課とのメールでのやり取りが中心となっていた。メールでは「回答は差し控える」などと実質的な無回答も多く(毎日新聞7月3日朝刊)▽学長選考会議の日程や会議の内容を電話で問い合わせても「分からない」「お答えできない」を繰り返すだけ。たとえば、「〇日に会議がありますね」と確認を求めると渋々認めるが、会議後に囲み取材に応じたとしても「お答えできない」の一点張り(『週刊金曜日』7月16日号)――という状態が続いた。
記者が逮捕される4日前の6月18日の選考会議は前日(17日)に吉田学長側が文部科学相に辞任を申し出たと公表し、注目を集めた。このとき旭川医科大学側と、道新を含む複数の報道記者との間で会議の取材をめぐって押し問答になった経緯があるという。旭川医科大学は22日の選考会議の際、新型コロナウイルス感染防止を理由に構内への立ち入り禁止と会議後の囲み取材に応じることを報道各社にファクスで通知した。同日、選考会議は文部科学相に吉田学長の解任を申し出ることを決めた。
記者を取り押さえた大学職員は、これまでのこうした広報対応を踏まえれば、会議室付近にいた人物は記者であり、会議の内容を取材していたと容易に認識できた。また、記者は旭川東署員には名刺と腕章を示していた。新型コロナウイルス禍とはいえ、国立大学法人という本来、社会に開かれた施設の公共性や、公共の利害に関係する事実を明らかにするためであったことを考慮すれば、記者の立ち入りは、録音を含めて報道を目的とした正当な取材活動・業務行為である、と考えられる。
以上のことから、旭川東署が大学職員による常人逮捕の手続きを進めたうえ、身柄を48時間も拘束し、いまなお捜査を継続していることは、行き過ぎた法執行であると考える。北海道警は、捜査をただちに終結すべきだ。また、北海道新聞社は7月7日に社内調査結果を公表しているが、公表方法、内容からみて報道機関としての説明責任を果たしておらず、社員である記者を守る姿勢も感じられない。改めて、外部のジャーナリストも入れた調査を行い、その報告書を開示すること、取材活動に従事する記者が安心して働ける環境整備のため具体的施策を講じること、これらを記者会見によって自ら明らかにすることを求める。
以 上
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道新に経緯の再調査と記者を守る施策の提示を求める見解
2021年8月5日
メディア総合研究所 所長 砂川 浩慶
国立大学法人・旭川医科大学への取材をめぐり、北海道新聞(以下、道新)記者が逮捕され、48時間拘束される事案が発生した。メディア総合研究所は、今回の事案は行き過ぎた法執行であり、大学・警察に抗議するとともに捜査を終結させることを求める。また、北海道新聞社に対しては第三者機関による調査を実施し、その経緯を明らかにするとともに、取材活動に従事する記者が安心して働ける環境整備を求める。
一連の経緯は以下のとおりである。
国立大学法人・旭川医科大学の吉田晃敏学長による不適切発言をめぐり、学長解任を審議することになった学長選考会議(非公開)を取材していた北海道新聞記者が6月22日に建造物侵入容疑で現行犯逮捕された。選考会議の開かれている看護学科棟4階廊下の会議室前で取材していたところ、会議室から出てきた大学職員が身柄を押さえ、北海道警旭川東署に引き渡したというものだ(常人逮捕)。各社の報道によれば、旭川医科大学は「記者は返答せず立ち去ろうとした。学外者が無許可で建物内に侵入していると判断、その場で取り押さえ警察に通報した」(毎日新聞7月3日朝刊)と説明している。
吉田学長の不適切発言は、『週刊文春』2020年12月24日号が「コロナを完全になくすためには(クラスターが発生した)あの病院が完全になくなるしかない、ということ」などといった内容を報道したことで発覚した。ところが旭川医科大学の広報対応は、酷いものであった。具体的には▽地元記者クラブなどは同大に対し、以前から報道責任者による直接の対応を求めていた。だが、大学側は応じず、総務課とのメールでのやり取りが中心となっていた。メールでは「回答は差し控える」などと実質的な無回答も多く(毎日新聞7月3日朝刊)▽学長選考会議の日程や会議の内容を電話で問い合わせても「分からない」「お答えできない」を繰り返すだけ。たとえば、「〇日に会議がありますね」と確認を求めると渋々認めるが、会議後に囲み取材に応じたとしても「お答えできない」の一点張り(『週刊金曜日』7月16日号)――という状態が続いた。
記者が逮捕される4日前の6月18日の選考会議は前日(17日)に吉田学長側が文部科学相に辞任を申し出たと公表し、注目を集めた。このとき旭川医科大学側と、道新を含む複数の報道記者との間で会議の取材をめぐって押し問答になった経緯があるという。旭川医科大学は22日の選考会議の際、新型コロナウイルス感染防止を理由に構内への立ち入り禁止と会議後の囲み取材に応じることを報道各社にファクスで通知した。同日、選考会議は文部科学相に吉田学長の解任を申し出ることを決めた。
記者を取り押さえた大学職員は、これまでのこうした広報対応を踏まえれば、会議室付近にいた人物は記者であり、会議の内容を取材していたと容易に認識できた。また、記者は旭川東署員には名刺と腕章を示していた。新型コロナウイルス禍とはいえ、国立大学法人という本来、社会に開かれた施設の公共性や、公共の利害に関係する事実を明らかにするためであったことを考慮すれば、記者の立ち入りは、録音を含めて報道を目的とした正当な取材活動・業務行為である、と考えられる。
以上のことから、旭川東署が大学職員による常人逮捕の手続きを進めたうえ、身柄を48時間も拘束し、いまなお捜査を継続していることは、行き過ぎた法執行であると考える。北海道警は、捜査をただちに終結すべきだ。また、北海道新聞社は7月7日に社内調査結果を公表しているが、公表方法、内容からみて報道機関としての説明責任を果たしておらず、社員である記者を守る姿勢も感じられない。改めて、外部のジャーナリストも入れた調査を行い、その報告書を開示すること、取材活動に従事する記者が安心して働ける環境整備のため具体的施策を講じること、これらを記者会見によって自ら明らかにすることを求める。
以 上
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