声明・アピール
歴史の闇に光を当てる果敢な報道を期待する
~一連の「植村裁判」終了に当たって~
2021年04月2日
メディア総合研究所
メディア総合研究所
歴史の闇に光を当てる果敢な報道を期待する
~一連の「植村裁判」終了に当たって~
メディア総合研究所
所長 砂川 浩慶
元朝日新聞記者で『週刊金曜日』発行人の植村隆さんが、「慰安婦」報道をめぐる署名記事を「捏造」と決めつけた研究者らに対して名誉棄損を訴えた一連の裁判で、最高裁による判断が示された。残念ながら植村さん側の主張は認められず、慰安婦問題をめぐる事実に基づかない主張は、「真実相当性」のハードルを下げる司法判断によって、札幌・東京の地裁・高裁、そして最高裁に容認されてしまった。
根拠のない情報を流布させた責任を免責した一連の司法判断が、この国の言論空間をさらに歪んだものにしてしまう悪影響を強く懸念せざるを得ない。とくに、誤った情報で不当なバッシングにさらされた植村さんとそのご家族が、法的には何の補償も得られないことになったのは返す返すも残念だ。
一方で、被告の西岡力氏や櫻井よしこ氏らは、いずれの法廷でも植村氏の記事を「捏造」と断定した根拠を示すことができず、かえって自身の主張の一部を訂正することを余儀なくされた。このように、一連の裁判を通じて、植村さんが決して「捏造記者」でなかったことが事実をもって証明された、と日本の司法が認定したことにもなった。札幌・東京双方における植村さんの弁護団の皆さんに対し、この間の多大な努力を心より労いたい。また、この裁判のたたかいを通じて、全国各地の心ある市民やジャーナリスト、学生たちの間に広がった支援の輪も、得難い成果だと言えるのではないだろうか。
「フェイクニュース」がSNSなどで容易に拡散してしまう今日、事実に基づいた正確な報道・情報はますます重要性を帯びてきている。それは、プロフェッショナルとしてのジャーナリストたちの地道な活動なくして成り立たない。いわゆる「慰安婦」問題については、近年の歴史研究の進展にもかかわらず、日本国内の一般のメディアによる報道は、残念ながらごく一部に限られている。報道の現場で働く方々の一層の奮起を願わずにいられない。
戦争における加害・被害の悲劇を二度と繰り返さないためにも、現代そして次世代を担う記者・ジャーナリスト各位には、日本の戦争責任・植民地責任をめぐるテーマについて、臆することなく果敢に報道していくことを、心から期待したい。
2021年3月12日 以 上
~一連の「植村裁判」終了に当たって~
メディア総合研究所
所長 砂川 浩慶
元朝日新聞記者で『週刊金曜日』発行人の植村隆さんが、「慰安婦」報道をめぐる署名記事を「捏造」と決めつけた研究者らに対して名誉棄損を訴えた一連の裁判で、最高裁による判断が示された。残念ながら植村さん側の主張は認められず、慰安婦問題をめぐる事実に基づかない主張は、「真実相当性」のハードルを下げる司法判断によって、札幌・東京の地裁・高裁、そして最高裁に容認されてしまった。
根拠のない情報を流布させた責任を免責した一連の司法判断が、この国の言論空間をさらに歪んだものにしてしまう悪影響を強く懸念せざるを得ない。とくに、誤った情報で不当なバッシングにさらされた植村さんとそのご家族が、法的には何の補償も得られないことになったのは返す返すも残念だ。
一方で、被告の西岡力氏や櫻井よしこ氏らは、いずれの法廷でも植村氏の記事を「捏造」と断定した根拠を示すことができず、かえって自身の主張の一部を訂正することを余儀なくされた。このように、一連の裁判を通じて、植村さんが決して「捏造記者」でなかったことが事実をもって証明された、と日本の司法が認定したことにもなった。札幌・東京双方における植村さんの弁護団の皆さんに対し、この間の多大な努力を心より労いたい。また、この裁判のたたかいを通じて、全国各地の心ある市民やジャーナリスト、学生たちの間に広がった支援の輪も、得難い成果だと言えるのではないだろうか。
「フェイクニュース」がSNSなどで容易に拡散してしまう今日、事実に基づいた正確な報道・情報はますます重要性を帯びてきている。それは、プロフェッショナルとしてのジャーナリストたちの地道な活動なくして成り立たない。いわゆる「慰安婦」問題については、近年の歴史研究の進展にもかかわらず、日本国内の一般のメディアによる報道は、残念ながらごく一部に限られている。報道の現場で働く方々の一層の奮起を願わずにいられない。
戦争における加害・被害の悲劇を二度と繰り返さないためにも、現代そして次世代を担う記者・ジャーナリスト各位には、日本の戦争責任・植民地責任をめぐるテーマについて、臆することなく果敢に報道していくことを、心から期待したい。
2021年3月12日 以 上