声明・アピール
特定秘密保護法案のさらなる報道についての要請
2013年11月18日
メディア総合研究所
メディア総合研究所
新聞・通信・放送各社 御中
メディア総合研究所
所長 砂 川 浩 慶
特定秘密保護法案のさらなる報道についての要請
特定秘密保護法案に関する衆議院での審議が今週ヤマ場を迎えると伝えられている。当研究所では、この法案は「民主主義」「国民主権」という日本国憲法の土台を崩壊させる危険性を持つ稀代の悪法であり、廃案にすべきと考えている。「適性評価」によるプライバシー侵害、「監視社会」化による暗黒社会の招聘、恣意的な運用が可能でかつ公開を前提としない「特定秘密」による社会の閉塞化、厳罰化による「報道の自由」や「知る権利」への萎縮効果など、多くの問題点を抱えているからだ。
このような多くの問題を持ち、国民生活に密接に関わる特定秘密保護法案であるが、国民全体が十分理解しないままに国会で性急な審議が進められている。この法案の危険性・問題点や各種団体・個人による反対運動が報道されることによって、各種世論調査結果でも「反対」が増加してきたが、いまだ「良く分からない」との回答も目立っている。国民が自らの問題としてこの法案を考えるためには、質・量とも十分な情報によって理解を深めることが欠かせない。そのためにも、さらなる報道の充実が必要となる。
既に新聞においては、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞、共同通信や各地方紙などが積極的な報道を展開している。また、テレビにおいてもテレビ朝日、TBSなどがニュース番組やコーナー企画を充実させている。その一方、最大の発行部数を誇る読売新聞、公共放送であるNHKでは十分な報道が行われているとはいいがたい。特にNHKにおいては、この間、安倍首相に近い人物が経営委員に指名され、年明けに任期を迎える会長人選にも安倍首相の影響が及ぶことが懸念されており、そのことが特定秘密保護法案をあまり報じないこととつなげて考えられている。国民生活に密接に関わる問題を取り上げることは公共放送の責務であり、このような懸念を払拭するためにも、番組での積極的な解説が必要だ。
危険性を持った法律が一旦、制定されると一人歩きをはじめ、国民生活に牙を向くことは、今回の特定秘密保護法案同様、国際的な秘密保護水準の達成を制定目的とした戦前の軍機保護法や、治安維持法の改正経緯・運用をみれば明らかである。報道各社が、問題点、歴史的経緯、国際比較、憲法との関係など、特定秘密保護法案をめぐる様々な論点をさらに提示・解説することで、国民が考える材料が豊かになり、民主的な判断が可能となる。
将来に禍根を残さないためにも、報道各社が特定秘密保護法案に関する、さらなる報道を実施することを強く求める。