声明・アピール
表現の自由を規制する個人情報保護法に反対する共同アピール
2001年04月11日
メディア総合研究所
メディア総合研究所
さる4月11日、作家、ジャーナリスト、出版人などを呼びかけ人とする「表現の自由を規制する個人情報保護法案に反対する共同アピール」を国会で記者発表したことは、メディアでとりあげていただきました。その後、同アピールへ賛同を求める活動を行ってきましたが、当初の1ヵ月間で500人を超える署名が寄せられました。個人の資格での賛同署名とはいえ、第一線で仕事をしている作家、ジャーナリスト、脚本家や多くの出版社の代表が名前を連ねています。
第一次集約は5月15日に行い、537人連名のリストを添付し、共同アピールを総理大臣、衆参の内閣委員会全委員および各党の政策調査会等に送付し、「表現の自由にかかわる分野についてはこの法律の対象外」とするよう重ねて強く要請しました。
さらに、第二次集約は6月21日におこない、2100名に増えた賛同者リストとアピール文を、衆参の内閣委員の議員会館の各部屋を訪ね、議員(不在の場合は秘書)に手渡し、現在、国会に提出されている法案を廃案にするとともに、抜本的な見直しを行い、国が保有する個人情報の保護と自己情報コントロール権を盛り込んだ法案を出しなおすよう要請しました。
表現の自由を規制する個人情報保護法案に反対する共同アピール
今国会に提出された「個人情報の保護に関する法律案」は、このままでは「個人情報の保護」という本来の目的に反し、むしろ政治家や官僚などがジャーナリズムや表現活動に新たな制約を加えるための法的武器を与えることにもなりかねない。
もともとこの法案は、国や公共団体が保有する個人情報を国民が自己管理することを促し、民間事業者が保有する個人情報の商業目的による不正流出などを規制するために立法化が始められたものである。それが実際に上程された法案は、ジャーナリズムを含む民間全体を取り締まる法に性格を変え、言論・報道機関を信用情報業者や名簿業者と同列に置いて主務大臣がこれを統轄するなど、表現の自由への公権力の介入に道を開き、取材・報道・表現活動を様々な形で制約する危険性を持つ内容となっている。
法案は「基本原則」をすべての個人情報取扱事業者に適用するとしており、もしこれが取材・報道・表現活動並びに学術研究活動に適用されれば、「適正な取得」「透明性の確保」などの5原則にもとづいて、取材過程の開示や記事・研究論文の削除が求められることにもなりかねないし、原則違反を理由に裁判に訴えられる怖れさえある。そうなれば取材源との信頼関係は根底から揺らぐことになり、取材・報道・表現活動が大きな制約を受けるのは火を見るより明らかである。
確かに、第55条(適用除外)で、「放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関」が「報道の用に供する目的」で取り扱う個人情報については「義務規定」を適用しないとしている。しかし、この適用除外には出版社やフリーランスの作家・ジャーナリスト等は明記されておらず、しかも「報道の用に供する目的」と言論表現活動の中の極めて狭い範囲に限定されているため、それ以外の領域が主務大臣の改善・中止命令や刑罰など政府の直接的な統制のもとに置かれることになる。学術研究機関についても全く同様の問題を指摘することができる。表現の自由等への配慮を求める規定もあるが、乱用の防止やチェックを具体的に担保する仕組が設けられていないため、実効的な歯止めは期待できない。
以上のような理由から、私たちは、政府が提出した「個人情報の保護に関する法律案」に断固反対するとともに、メディアを始め表現の自由に関わる分野については、この法律の対象外とすることを強く要求する。
第一次集約は5月15日に行い、537人連名のリストを添付し、共同アピールを総理大臣、衆参の内閣委員会全委員および各党の政策調査会等に送付し、「表現の自由にかかわる分野についてはこの法律の対象外」とするよう重ねて強く要請しました。
さらに、第二次集約は6月21日におこない、2100名に増えた賛同者リストとアピール文を、衆参の内閣委員の議員会館の各部屋を訪ね、議員(不在の場合は秘書)に手渡し、現在、国会に提出されている法案を廃案にするとともに、抜本的な見直しを行い、国が保有する個人情報の保護と自己情報コントロール権を盛り込んだ法案を出しなおすよう要請しました。
2001年6月21日共同アピール事務局
●日本ペンクラブ
〒107-0052 東京都港区赤坂9-1-7-265 Tel:03-3402-1171/Fax:3402-5951
●日本雑誌協会
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台1-7 Tel:03-3291-0775/Fax:3293-6239
●日本書籍出版協会
〒162-0828 東京都新宿区袋町6 Tel:03-3268-1305/Fax:03-3268-1196
●メディア総合研究所
〒160-0022 東京都新宿区新宿1-29-5-902 Tel:03-3226-0621/Fax:03-3226-0684
●日本ペンクラブ
〒107-0052 東京都港区赤坂9-1-7-265 Tel:03-3402-1171/Fax:3402-5951
●日本雑誌協会
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台1-7 Tel:03-3291-0775/Fax:3293-6239
●日本書籍出版協会
〒162-0828 東京都新宿区袋町6 Tel:03-3268-1305/Fax:03-3268-1196
●メディア総合研究所
〒160-0022 東京都新宿区新宿1-29-5-902 Tel:03-3226-0621/Fax:03-3226-0684
今国会に提出された「個人情報の保護に関する法律案」は、このままでは「個人情報の保護」という本来の目的に反し、むしろ政治家や官僚などがジャーナリズムや表現活動に新たな制約を加えるための法的武器を与えることにもなりかねない。
もともとこの法案は、国や公共団体が保有する個人情報を国民が自己管理することを促し、民間事業者が保有する個人情報の商業目的による不正流出などを規制するために立法化が始められたものである。それが実際に上程された法案は、ジャーナリズムを含む民間全体を取り締まる法に性格を変え、言論・報道機関を信用情報業者や名簿業者と同列に置いて主務大臣がこれを統轄するなど、表現の自由への公権力の介入に道を開き、取材・報道・表現活動を様々な形で制約する危険性を持つ内容となっている。
法案は「基本原則」をすべての個人情報取扱事業者に適用するとしており、もしこれが取材・報道・表現活動並びに学術研究活動に適用されれば、「適正な取得」「透明性の確保」などの5原則にもとづいて、取材過程の開示や記事・研究論文の削除が求められることにもなりかねないし、原則違反を理由に裁判に訴えられる怖れさえある。そうなれば取材源との信頼関係は根底から揺らぐことになり、取材・報道・表現活動が大きな制約を受けるのは火を見るより明らかである。
確かに、第55条(適用除外)で、「放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関」が「報道の用に供する目的」で取り扱う個人情報については「義務規定」を適用しないとしている。しかし、この適用除外には出版社やフリーランスの作家・ジャーナリスト等は明記されておらず、しかも「報道の用に供する目的」と言論表現活動の中の極めて狭い範囲に限定されているため、それ以外の領域が主務大臣の改善・中止命令や刑罰など政府の直接的な統制のもとに置かれることになる。学術研究機関についても全く同様の問題を指摘することができる。表現の自由等への配慮を求める規定もあるが、乱用の防止やチェックを具体的に担保する仕組が設けられていないため、実効的な歯止めは期待できない。
以上のような理由から、私たちは、政府が提出した「個人情報の保護に関する法律案」に断固反対するとともに、メディアを始め表現の自由に関わる分野については、この法律の対象外とすることを強く要求する。
2001年4月11日