メディア総合研究所  

メディア総合研究所は次の3つの目的を掲げて活動していきます。

  1. マス・メディアをはじめとするコミュニケーション・メディアが人々の生活におよぼす社会的・文化的影響を研究し、その問題点と可能性を明らかにするとともに、メディアのあり方を考察し、提言する。
  2. メディアおよび文化の創造に携わる人々の労働を調査・研究し、それにふさわしい取材・創作・制作体制と職能的課題を考察し、提言する。
  3. シンポジウム等を開催し、研究内容の普及をはかるとともに、メディアおよび文化の研究と創造に携わる人々と視聴者・読者・市民との対話に努め、視聴者・メディア利用者組織の交流に協力する。
Media Research Institute
研究員専用
  • 研究プロジェクトの状況
  • 運営委員会・研究会報告
  • ログイン
維持会員募集
研究所の目的に賛同し、活動を支えてくださる維持会員を募集しています。
維持会費は年間1口1万円。

●維持会員の特典
『放送レポート』(隔月・年6回)、『メディア関連資料』CD版(年2回)が届けられます。また、研究所が行う催しには無料、または割引で参加することができます。
メディア総研の案内パンフレットは下記からダウンロードできます。
メディア総合研究所
〒130-0026
東京都墨田区両国3-21-14
両国有泉ビル3階
Tel: 03-6666-9404
Fax: 03-6659-9673
mail@mediasoken.org
 
  • HOME 
  •  < 
  • 声明・アピール

声明・アピール

法務省・人権擁護推進審議会「人権救済制度に在り方に関する中間取りまとめ」への市民、ジャーナリスト、研究者216名連名によるパブリック・コメント

2001年01月19日
メディア総合研究所


   2000年11月28日に法務省・人権擁護推進審議会が「人権救済制度の在り方に関する中間取りまとめ」を発表しました。
 この「中間取りまとめ」での提案に対し、とりわけ表現の自由や報道の自由の観点からみると根本的な疑問を禁じえないと、抜本的な見直しを求めるパブリック・コメントを、メディアおよび法律研究者、ジャーナリスト、市民の方々216名が連名で、法務省に提出しました。
 以下に、提出されたパブリック・コメントを紹介します。

  
2001年1月19日
216名の連名による法務省・人権擁護推進審議会へのパブリック・コメント
 
「人権救済制度の在り方に関する中間取りまとめ」の提案の再検討を求める

 人権救済制度のあり方を検討してきた法務省の人権擁護推進審議会は、2000年11月28日、「人権救済制度の在り方に関する中間取りまとめ」を公表した。ここでは、あらゆる人権を対象とする相談、あっせん・指導の権限とともに、「差別」、「虐待」、「公権力による人権侵害」、「メディアによる人権侵害」の四つの類型に対する、調停・仲裁、勧告・公表、訴訟援助などの「積極的救済」権限をもち、強制的な救済や調査の権限も検討課題として視野に入れた、政府から独立性を有する人権救済機関の設置が提案されている。この機関はまた、こうした人権救済とともに、人権啓発および政府への助言等の事務も所掌することが構想されている。
 私たちは、「中間取りまとめ」でも言及されているような差別や人権に関する深刻な問題をこの日本社会が少なからず抱えており、救済制度のあり方を含め、その克服改善が21世紀の私たちの社会が直面する極めて重要な課題であることを認識している。しかし、今回の「中間取りまとめ」の提案には、とりわけ表現の自由や報道の自由などの観点から、根本的な疑問を禁じえない。
 まず第一に、民間における私人間の人権侵害に過度に重点が置かれ、公権力による人権侵害の比重が低く、軽視されている。積極的救済の対象となる四つの類型のうち、三つが民間における人権侵害の場面であり、一類型を構成する「公権力による人権侵害」もその積極的救済の対象とされるのはわずかに「差別」と「虐待」だけである。公権力に対する人権による拘束は極めて弱い。それだけでなく、公権力が人権救済の名のもとに強力な措置や調査の権限を備えた“取り締まり官”として市民社会に深く立ち入り、諸々の規制を行使するシステムが想定されている。官民における人権侵害の重大性と救済の緊急性・必要性から考えて、これでは著しくバランスを失していると言わざるをえない。
 第二に、表現やメディアに対する扱いについて、憲法上の重要な権利である表現の自由や報道の自由への適切な配慮を欠いている。まず目につくのは、積極的救済の対象としての人権侵害のなかで、表現・メディアが占める異様な比重である。「メディアによる人権侵害」が独立した類型を構成しているのに加えて、「差別」の類型でも「差別表現」が対象とされている。表現・メディアによる人権侵害が四つの人権侵害類型のうちの一つ半も占めるという認識が、日本の人権侵害の実像をフェアーに反映しているとはとても言えない。
 表現・メディア規制の中身についても多くの問題がある。まず、差別を助長・誘発する表現や集団誹謗的表現などの「差別表現」を安易に規制対象に据えている。この点は、これまで学界などでも賛否が鋭く対立し、人種差別撤廃条約の締結に際して日本政府は表現の自由との関係でその関連条項につき留保を行った経緯がある。また、「過剰な取材」というあいまい広範な概念を人権侵害の例として示し、さらに、差別助長・誘発表現に対する命令・裁定などの強制措置やメディアに対する強制調査権の導入を検討課題として残している。いずれも表現・報道の自由への過剰な規制の試みと言える。そもそも、司法に加え、政府から独立しているとはいえ、行政機関が表現・報道内容に立ち入り、判断や規制の権限を行使すること自体、憲法上重大な問題があると言わなければならない。
 最後に、人権救済機関の政府からの独立性や中立公正さの必要が述べられているが、法務省の人権擁護部門の改組により法務省の役人がこの人権機関の事務局に横滑りする可能性がある。その上、事務局が事案の調査をはじめ相談、調停、仲裁などの強力な権限を行使することも想定されている。独自の人事・予算権限確保策の欠如とあわせ、法務省からの独立性が実際にどの程度確保されるのか、危惧せざるをえない。
 今回の「中間取りまとめ」の人権機関構想は、国連の規約人権委員会からかねて指摘されてきた公権力による人権侵害を解決できないだけでなく、人権の名により市民の生活と自由への行政の過剰な介入をもたらす懸念がある。特に、公権力への監視機能を抑制するなど表現・報道の自由を不当に侵害するとともに、1997年以来活動を重ねてきた放送と人権等権利に関する委員会(BRC)や、いくつかの新聞が試みをはじめた第三者的な苦情救済制度などの自主・自律の努力の芽を摘み取る帰結を招きかねず、私たちとしてはとうてい是認することができない。
 私たちは、第三者も参画した人権救済制度の整備・拡充などメディアによる自主・自律のさらなる努力を促すとともに、貴審議会に対し、表現やメディアへの規制の排除をはじめ、人権救済制度のあり方について「中間取りまとめ」の提案を抜本的に見直すよう強く求める。