声明・アピール
緊急アピール「報道被害の救済へ―いまこそメディアの目に見える対応を求めます」
2000年10月19日
メディア総合研究所
メディア総合研究所
10月5、6日に開かれた日本弁護士連合会(日弁連)の人権擁護大会で、「人権機関設置」が提案されました。報道機関に対しても強制調査権をもち、違反には罰金を科し、緊急の場合は人権侵害の中止や予防を求める仮救済決定(報道の事前差し止め)を下すこともできるというものです。
これをめぐって大会では賛否の意見が激しくぶつかり、報道機関への規制については「今後慎重な検討が必要である」との修正を加えて「宣言」が採択されました。しかし、〈日弁連が13年前に提案したメディアの自主的救済機関「報道評議会」がいまだに設けられていないことへのいらだちは……賛否を越えて共通していた〉と新聞は伝えています。
日弁連は昨年の人権擁護大会でも、「報道のあり方と報道被害の防止・救済に関する決議」を採択し、記者クラブの改革などと併せて、①取材・報道によって人権を侵害した場合には、速やかに訂正・名誉回復措置を自主的に取るような社内制度(社内オンブズマン)を設けること、②活字メディアでは「報道評議会」などの独立した第三者機関を自主的に設置し、報道の自由を守りつつ、報道被害の救済の実現に努めること、を求めていました。
メディアを見つめる視線の厳しさは、弁護士に限ったことではありません。節度を欠いた取材と報道が人々のメディア不信を生み、報道被害の救済に対するメディアの消極的な姿勢がどれほど人々を失望させ、いらだちを増幅させてきたか。しかも、そうした市民のメディア不信を背に、自民党は「報道モニター制度」を立ち上げ、青少年保護を理由にメディア規制を目指す「青少年社会(有害)環境対策基本法案」を準備しています。また、個人情報保護システムの検討をつづけてきた政府の専門委員会は、新聞・放送・出版界あげての要請を抑えて報道分野にも「基本原則」を適用する大綱をまとめました。取材源の秘匿が脅かされ、情報提供者との信頼関係が失われ、報道が萎縮する恐れは一段と強まることが懸念されます。
「人権機関設置」の提案は、今後、法務省・人権擁護推進審議会で審議がつづけられ、11月下旬には「中間取りまとめ」を発表することになっています。同審議会の塩野宏会長は、10月3日の会見で「報道による人権侵害も、仲裁や勧告の対象になる」との見通しを示してもいます。
メディアに対する公的規制の包囲網がつくられつつある、と表現しても過言でない情勢を迎えています。それだけに、報道被害の防止・救済にメディアはどうとりくむのか――目に見える形でその対応策を打ち出すことが、いまほど差し迫ってメディアに求められているときはありません。放送界では97年6月に「放送と人権等権利に関する委員会」(BRC)がつくられ報道被害の救済に向けて一歩を踏み出したものの、放送各社の独自の取り組みは弱く、活字メディアにおいてはそうしたシステムもつくられないまま今日にいたっているからです。
私たちは、新聞・放送・出版に携わる人たちが市民のメディアへの異議申し立てを正面から受けとめ、公正な解決ができる自主・自律の仕組みを全力で編み出し、提示することを強く要請します。どうか、メディアをとりまく厳しい状況を正視して、まず個々の新聞・放送・出版事業者が具体的な対応策を明らかにし、その実現のために相互に協力して、市民のメディア批判に対する説明責任を果たされるよう心から期待します。
これをめぐって大会では賛否の意見が激しくぶつかり、報道機関への規制については「今後慎重な検討が必要である」との修正を加えて「宣言」が採択されました。しかし、〈日弁連が13年前に提案したメディアの自主的救済機関「報道評議会」がいまだに設けられていないことへのいらだちは……賛否を越えて共通していた〉と新聞は伝えています。
日弁連は昨年の人権擁護大会でも、「報道のあり方と報道被害の防止・救済に関する決議」を採択し、記者クラブの改革などと併せて、①取材・報道によって人権を侵害した場合には、速やかに訂正・名誉回復措置を自主的に取るような社内制度(社内オンブズマン)を設けること、②活字メディアでは「報道評議会」などの独立した第三者機関を自主的に設置し、報道の自由を守りつつ、報道被害の救済の実現に努めること、を求めていました。
メディアを見つめる視線の厳しさは、弁護士に限ったことではありません。節度を欠いた取材と報道が人々のメディア不信を生み、報道被害の救済に対するメディアの消極的な姿勢がどれほど人々を失望させ、いらだちを増幅させてきたか。しかも、そうした市民のメディア不信を背に、自民党は「報道モニター制度」を立ち上げ、青少年保護を理由にメディア規制を目指す「青少年社会(有害)環境対策基本法案」を準備しています。また、個人情報保護システムの検討をつづけてきた政府の専門委員会は、新聞・放送・出版界あげての要請を抑えて報道分野にも「基本原則」を適用する大綱をまとめました。取材源の秘匿が脅かされ、情報提供者との信頼関係が失われ、報道が萎縮する恐れは一段と強まることが懸念されます。
「人権機関設置」の提案は、今後、法務省・人権擁護推進審議会で審議がつづけられ、11月下旬には「中間取りまとめ」を発表することになっています。同審議会の塩野宏会長は、10月3日の会見で「報道による人権侵害も、仲裁や勧告の対象になる」との見通しを示してもいます。
メディアに対する公的規制の包囲網がつくられつつある、と表現しても過言でない情勢を迎えています。それだけに、報道被害の防止・救済にメディアはどうとりくむのか――目に見える形でその対応策を打ち出すことが、いまほど差し迫ってメディアに求められているときはありません。放送界では97年6月に「放送と人権等権利に関する委員会」(BRC)がつくられ報道被害の救済に向けて一歩を踏み出したものの、放送各社の独自の取り組みは弱く、活字メディアにおいてはそうしたシステムもつくられないまま今日にいたっているからです。
私たちは、新聞・放送・出版に携わる人たちが市民のメディアへの異議申し立てを正面から受けとめ、公正な解決ができる自主・自律の仕組みを全力で編み出し、提示することを強く要請します。どうか、メディアをとりまく厳しい状況を正視して、まず個々の新聞・放送・出版事業者が具体的な対応策を明らかにし、その実現のために相互に協力して、市民のメディア批判に対する説明責任を果たされるよう心から期待します。