メディア総合研究所  

メディア総合研究所は次の3つの目的を掲げて活動していきます。

  1. マス・メディアをはじめとするコミュニケーション・メディアが人々の生活におよぼす社会的・文化的影響を研究し、その問題点と可能性を明らかにするとともに、メディアのあり方を考察し、提言する。
  2. メディアおよび文化の創造に携わる人々の労働を調査・研究し、それにふさわしい取材・創作・制作体制と職能的課題を考察し、提言する。
  3. シンポジウム等を開催し、研究内容の普及をはかるとともに、メディアおよび文化の研究と創造に携わる人々と視聴者・読者・市民との対話に努め、視聴者・メディア利用者組織の交流に協力する。
Media Research Institute
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メディア総合研究所
160-0008 新宿区三栄町17 木原ビル2F
Tel: 03-3226-0621
Fax: 03-3226-0684
mail@mediasoken.org
 

暫定訳

国連「表現の自由」日本調査報告の暫定訳
報告の冒頭部分と、末尾の「結論と勧告」の全文


I. はじめに
1. 日本政府の招聘により、特別報告者は2016年4月12日から19日、日本を正式訪問した。この訪日は、言論と表現の自由権についての国際基準を遵守しているかを査定するという任務をはたすためである(A/HRC/RES/25/2)。
2. 訪日時に面会したのは、総合外交政策局局長、外務副大臣、法務副大臣兼内閣官房副長官、総務副大臣、参議院法務委員会委員長だった。また、内閣情報調査室、最高裁判所、警察庁、海上保安庁、内閣サイバーセキュリティセンター、公安調査庁、文部科学省、個人情報保護委員会の関係者の方々に会った。
3. 各国での調査任務においては、受け入れ側の政府から、重要かつ大量の資料を提供されなければならない。日本政府は、2015年12月に特別報告者を正式に招聘したが、後日日程調整する、と中止された。そのあと日程を変えて、2016年はじめに特別報告者を招聘し、生産的で活発な議論ができるよう訪日を位置付けた。特別報告者は、政府招聘と訪日時の支援について日本政府に厚く感謝する。
4. 政府関係者との面会以外に、NHK、日本民間放送連盟、日本新聞協会、日本雑誌協会、日本インターネットプロバイダー協会などの関係者とも会った。さらには、ジャーナリスト、学者、人権団体のメンバー、活動家、その他市民団体の関係者とも会うことができた。特別報告者は、人権団体メンバーやジャーナリストなど、個人的な経験や評価を共有してくれた市民社会の関係者、特に、市民社会との話し合いを調整するために尽力してくれた方々にも感謝したい。
5. 調査が終わった直後、政府関係者が情報機関を使って、市民社会との面会を調整してくれたメンバーのひとりを監視したという申し立てを知った。報告によると、訪日の日程調整にかかわった市民社会について情報を収集し、内部用メモで政府関係者とその情報を共有したという。特別報告者はこれを「監視の通報には深刻な懸念がある」として政府に公式に伝えている。そこでは「人権団体や国連の特別な手続きとのかかわりを監視するよう命令したり、監視するという行為自体、脅迫になり、国連とその関係者や人権分野の組織に協力したことへの報復行為と受け止めることになる(UA JPN 4/2016)」とした。政府は、この主張を繰り返し否定した(TK/UN/325)。

V. 結論と勧告
61. 調査活動を通して、特別報告者は、民主主義社会における言論と表現の自由の重要性を再確認し、言論と表現の自由の保障が人権促進と権利保障の根幹であると強調したい。人権を尊重するという志が歴史的にあったからこそ、日本は地域または世界にとって重要なリーダー的存在となったのだ。自由な情報交換や思想の自由を保障し促進するという志は、国家の経済的、科学的発展にとって欠かせないということは年月を経て証明されてきた。公民権や参政権、特に表現の自由の根幹が厚く保障されているのであれば、日本国憲法は歴史的観点からしても依然として欠かせない要素なのだ。
62. 政府からの検閲がないという重要事項も含め、この確固たる基盤がありながら、非常に深刻で懸案すべき兆しがあった。報道に対して政府関係者からの直接的かつ間接的圧力や、歴史的事実についての議論が開かれていないこと、また国家安全保障にかかわるという理由から情報アクセスがますます制限されるなど、日本の民主主義の基盤が揺るがないよう注意しなければならない。
63. 日本は、インターネット上の自由においては、世界でも模範的存在であることを強調したい。インターネットの普及率が高く、政府は内容を制限することがない。デジタルの自由をほとんど侵害しないことは、表現の自由を徹底しようとする政府の方針がうかがえる。
64. 日本における民主主義の基盤をより強化するには、今後も建設的な情報交換をしていくつもりで以下の手順を勧めたい。

A. メディアの独立性
65. 放送メディアを司る現在の法的枠組みの見直しを提案し、また特に政府の介入を可能とする法的基盤を削除することでメディアの独立性を強化するため、政府が放送法4条を見直し廃止することを勧めたい。これとともに、放送メディアの独立規制機関を設立するための枠組みを作るよう政府に強く求める。
66. ジャーナリストや調査報道に携わる関係者に対しては、いかなる脅迫もせず圧力もかけないと正式に発表するよう、政府当局やメディアグループに訴える。
67. 公共放送も民放も、その他活字メディアグループもが、自社の編集活動に対するあらゆる形の直接的、間接的圧力にも注意を払い、中でも議論を誘発する話題を調査したり、それについてコメントしたりするジャーナリストを絶対的に支持し、必ず保護するべきである。沖縄での軍事活動に反対する抗議、原発再稼働や原発災害の影響、第二次大戦における日本の責任など、政治的に非常に繊細な問題を調査するジャーナリストは、特別に支援が必要だ。
68. 報道の自由やメディアの独立性は、ジャーナリスト間の強い連帯なしにはありえない。ジャーナリスト団体は、現行の記者クラブ制度の影響について議論し、少なくとも責任ある立場の関係者は、できるかぎり幅広い範囲のジャーナリストが参加できるようにすること。またジャーナリストには、多様なメディアに携わる関係者間がより強く広く団結することで、どうしたら独立した報道をもっと広めることができるかを考えてほしい。

B. 歴史教育と報道への干渉
69. 教科書に掲載する歴史的事象の解釈を干渉せず、特に日本の第二次大戦への関与に関する事象に着目しつつ、これら重大犯罪について国民に知らせるための努力を惜しまないよう政府に要請する。学校のカリキュラムの完全なる透明性を確保し、教科書検定調査会が政府から影響を受けないよう再検討する、またそれにより政府は公立教育の独立性に積極的に貢献すべきである。
70. 慰安婦問題を含む過去の重大な人権侵害の数々について正式な情報を明確にし、かつ保障する努力を再検討し強化するために、政府は、真実、正義、賠償そして再発防止の保障を促進に関する国連特別報告者の招聘を検討すること。

C. 選挙キャンペーンと民衆のデモ
71. 選挙キャンペーンを過度に規制する規定を廃止することにより、公職選挙法が国際人権法に順守するよう改正を求める。
72. 訪日しての聞き取り調査と、その後に入手した情報にもとづいて考えると、特別報告者は沖縄での抗議デモへの抑圧について特段懸念している。民衆の抗議に対する圧力がある一方で、公的機関、特に警察は、市民が抗議や意義申し立てをできるよう、またメディアがこうした抗議行動を報道できるよう、あらゆる努力を惜しまないこと。過剰な罰則を課すことで、抗議者を極悪だと見せかけるのは、現在、公的政策への反対意見を伝えることができる日本国民の基本的自由権を侵害することにつながる。

D. 特定秘密保護法
73. 開示しても国家の安全を損なうことにつながらなければ、情報を秘密指定しないよう引き続き努力し、警戒するよう求める。
74. ジャーナリストには25条に定められた厳罰を課さないと政府関係者からの報告を受けて喜ばしく思ったものの、ジャーナリストの報道活動を萎縮しないよう法改正を求める。また、ジャーナリストによる情報開示は、その情報が公の利益とされ、正当で合法なジャーナリズムの追及のために情報が入手されたのであれば、ジャーナリストは処罰されないとの報告にも嬉しく思う。しかし、人権委員会の提案に沿って考えると、ジャーナリストや政府職員以外でも、国家の安全を脅かすことのない公の利益のための情報を開示した者が、処罰を受けずに済むことを保障するよう、政府が法律に例外規定をもうけることを提案する。
75. 少なくとも、秘密指定された情報へのアクセス権を持つ当局職員が情報を開示したときの処罰規定には、情報開示が公の利益のため、あるいは開示しても国家の安全を脅かすことがないという誠実な考えのもとに開示する個人は例外とするべきである。
76. 法律以外については、情報のアクセス権は、犯罪や公の利益となる情報の報道を促進する社会的かつ組織的規範を根底におかなければならない。このような規範を強化するには、組織のあらゆるレベルでの養成教育、支持政策や政治・企業リーダー、国際公務員、裁判所やその他の機関、また報復行為があった場合の説明責任が必要となる。
77. 衆議院は、説明責任を改善するよう政府に求め、特別報告者は、専門家で構成される独立監視委員会を設立するよう政府に求める。

E. 差別とヘイトスピーチ
78. 広い範囲で適用できる反差別法を制定するよう、日本に勧めたい。
79. 憎悪に対して日本政府が、国民を教育すべく正式に意見表明したことで、ヘイトスピーチの問題を取り上げた日本の努力には敬意を表したい。表現自体は、自由権規約20条の範囲内であり、19条3項の要件を満たしているのであれば制限されるべきでない。

F. デジタル権
80. 政府が、通信傍受に関連する法律とサイバーセキュリティへの新しい取り組みを検討する中で、自由権や通信の保障とインターネット上の技術革新が、規制しようとする試みにおいても、核心であることを願う。国会ではこうした取り組みに関して開かれた議論を展開し、プライバシーや表現の自由を保障する基準が法律によって担保されていなければならない。
81. 法律は、国家による通信傍受は完全なる例外的状況、あるいは独立した司法当局の管理の元でのみ行われなければならないと定めている。特に、法律は、いかなる電子またはデジタル監視は、少数派コミュニティを対象または監視するといったいかなる差別を根拠にして行われてはならないという基本理念に沿うべきである。